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早慶戦観戦記

第63回早慶対抗柔道戦 (平成23年11月20日)

11月20日、第63回早慶対抗柔道戦が、早稲田の道場にて行われました。誠に僭越ではございますが、平成22年卒の井浦佑紀がご報告をさせていただきます。

今年も始まった、第63回早慶対抗柔道戦。昨年早稲田は負けているだけに今年こそはと意気込む選手の表情が印象的だった。村山主将を筆頭に皆一列に並び礼をしたときは、自分が学生の時感じたなんとも言えない緊張感を思い出し身震いがした。それもそのはず私が大学3年生の時(2008年)、早稲田は数十年ぶりに慶應に敗北し、伝統に傷をつけてしまったという遣る瀬無い気持ちになった経験があるからだ。あれから2年勝ったり負けたりを繰り返して今回、後輩たちには全力を尽くしてほしかった。結果は引き分けだったが、チーム一丸となって立派に戦っていたと思う。

第63回早慶対抗柔道戦開会式

それでは一試合ずつ振り返っていきたい。

先鋒:井上凡 ○払腰 - 浅井駿

浅井 無段ながら積極的な攻め、しかし最後は払越で畳に叩きつけられる。慶応に初戦を譲り、去年の敗北が頭を過る。

   井上凡 (引き分け) 山田将弘

山田は軽量級らしい機敏な動きを見せ、途中には内股すかし等相手の裏をつく技で攻勢をかける。しかし全体的に慶応井上選手が先に技をかける展開。お互い決まり技はなくこの試合引き分けて両者下がる。

  高辻大地 ○合技 - 高山尚勝

高山も体格差に臆することなく、よく動き担ぎ技にて応戦するも、合わせ技にて仕留められる。この巨体を止める選手はいるのか。早稲田サイドに不安が垣間見えた。

  高辻大地-釣込腰○ 片岡正樹
  伊藤俊 - 内股○ 片岡正樹
  藤塚捷 (引き分け) 片岡正樹

続く片岡は担ぎ技で必死に攻める。片岡も同様体格差では上回る相手だったものの、組み手では片岡の有利な形で試合が進む。そして場外際、高辻選手の頭が下がったところに釣込腰一本。会場がいっきに盛り上がる。

第63回早慶対抗柔道戦

続く伊藤選手に対しても徹底的な攻め。大外でポイントを取った後抑え込みにはいるものの、あと数秒のところで逃げられた。しかし片岡は気持ちを入れ替え、相手が若干下がったところに内股一本。

続く藤塚戦では片岡の掛けた技に対して、藤塚選手の返し技によりあわや一本という場面もあり、疲れのせいか下がる場面が多かったように思われるが、ここは凌いで引き分け。一年生ながらここまで3人を消化するいい仕事をやってのけた。

  西口太郎 ○横四方固- 福井彬
  西口太郎 ○合技 -キアラシ ダーウッド

序盤慶応に流れをもっていかれるものの、片岡の頑張りもありここまでほぼ互角の勝負。しかし西口選手に福井、キアラシが一本負け。再び慶応優勢の展開が続く。

  西口太郎 -上四方固○ 星野映
  瀬詰晃弘 ○腕拉十字固- 星野映
  瀬詰晃弘 ○大外刈 -上田卓

この流れを一度星野の気迫の上四方固で止める。星野は怪我を押しての出場。「なんとかチームのために」そんな気迫が感じられた試合だった。しかし続く瀬詰選手に関節技を仕掛けられあえなく敗退。続く上田も大外刈で豪快に投げられ、慶応ムードは止まらない。

  瀬詰晃弘 -合技○  小林将来
  小林昂弘 -腕拉十字固○ 小林将来
  吉武壮祐 ○内股  -小林将来

続く小林は1年生のホープ。瀬詰、小林を華麗な技で退け会場をわかす。しかしこの日の小林はいい意味でも悪い意味でもあっさりしていた。吉竹には内股で一本負け。期待が大きかっただけに「もう少し粘れたのでは」と思う。

第63回早慶対抗柔道戦
  吉武壮祐 ○合技-  川端一洋
  吉武壮祐 ○有効- 野口雄飛
  吉武壮祐 -大内返○  五嶋広道
  檜垣卓志 -支釣込足○ 五嶋広道
  梅田貴志 ○内股  -五嶋広道

小林を内股で仕留めた吉武選手は流れにのり川端、野口を退け、続くは五嶋。吉武選手は無理矢理に技を仕掛け、一見技数が少ないように思えたが五嶋は落ち着いていた。吉武を大内返、檜垣を支釣込足といずれも相手の逆を突く見事な技で一本勝ちをした。しかし続く梅田には一本負け。小林同様、技の完成度は高いものの、体力や粘り強さという点では来年に課題が残ったのではないか。

第63回早慶対抗柔道戦
  梅田貴志 -出足払○ 松井誠司
  鈴木新  ○払腰  -松井誠司

次は4年の松井。本日会場を一番沸かせたヒーローでもあり、拍子抜けさせてくれた選手でもあろう。五嶋を抜いた梅田に終始先に技をかけられる展開。松井は私が学生時代よく練習してきた後輩でもあるので彼がどういう攻め方をするのかは分かっていたつもりだった。組むまでは積極的に動くものの、組むといきなりベテラン柔道にスイッチする松井は今回も無難にいけば引き分け、もしくは華麗に舞い負けるのではと思っていた。しかし今日は違った。一度待てがかかりお互い離れ、次のターンで松井が道場の端まで追い詰め相手が左に回り込んだ組み際だった。松井の思い切って払った足が、タイミングを完璧にとらえ出足払で一本。

第63回早慶対抗柔道戦

会場は歓声につつまれた。

しかしながら続く鈴木選手には一方的に攻められ払腰にて半ば諦めの入った一本負け。やはりただでは終わらない松井、いいものを見せてもらったが、松井・・・。

ここまで慶応に大きくリードを許し、早稲田は残る6人。

  鈴木新 -背負投○  村山拓也
  鎌田一輝 -出足払○ 村山拓也
  高橋陽二郎 -反則勝○  村山拓也
  大前知也 -内股○ 村山拓也
  山本俊介 -合技○村山拓也
  森山寛太 -合技○  村山拓也
  利國竜生 -掬投○ 村山拓也
  福島遼太郎 -内股○  村山拓也
  小倉大樹 (引き分け) 村山拓也

しかし私は安心していた。なぜなら次は主将の村山。重戦車のような体つきと無尽蔵な体力には誰もかなわないと確信していたからだ。その期待通り、福島までオール一本勝ち。危なげなくここまで8人抜き。一人で早稲田優勢にまで持ちこんだ。

第63回早慶対抗柔道戦 第63回早慶対抗柔道戦 第63回早慶対抗柔道戦

ここまで危なげなく勝ち進んだものの、8人抜き体力はさすがに限界に達していたに違いない。しかし9人目はなんと慶応の主将小倉。村山と小倉は国学院栃木高校時代からの同窓。高校時代から県の決勝では二人で戦ってきた。

私の見解では両者力は互角。しかし村山は9人目であり体力も限界。さすがに小倉には負けても仕方がないと思っていた。
ところが、今日の村山は一段と闘志むき出しの戦闘モード。4年間の想いが伝わる必死の攻めに誰もが感動したに違いない。
時間も7分と長い中、決して下がることなく、逃げることなく戦い抜き、引き分け。会場は「村山よくやった」そんな拍手で包まれていた。

第63回早慶対抗柔道戦
  藤井岳 ○内股- 石原佑太郎
  藤井岳 ○大内刈- 佐藤健太郎
  藤井岳 ○払腰- 堀敦人
  藤井岳 ○内股透- 後藤有輝
  藤井岳 (引き分け) 赤迫健太

残るは大将藤井のみ。しかし彼は高校からのスター選手、赤迫までは無難に抜いてくるだろうと思っていたが予想的中。堀の組み手に苦手感を出しながらも4人を全て一本勝ちで抜いてきた。
最後は早稲田大将赤迫。両者は今年の東京学生でも対戦。その時は藤井に僅差で軍配が上がっていた。両者とも力は互角ながら、赤迫の攻めが勝り指導2つをとるものの、ここで試合終了。抜き試合で大将までもつれ込むという、接戦を繰り広げ早慶戦は幕を閉じた。

第63回早慶対抗柔道戦

結果としては引き分け。勝ち抜き戦であるにも関わらず全員が試合するという内容の濃い戦いだった。また一本勝ちも多くここ数年で一番会場が盛り上がったといっても過言ではないのではないか。

その一方で1~3年生には体力不足が目立つ等課題の残る、ある意味収穫の多い早慶戦だったと思う。

近年早慶の実力は拮抗してきており、数年前までの楽勝ムードはない。ただ、だからこそ、チームワークは増してきているし、そんな学生を見てとても感動した。卒業して社会にでて忘れかけていた大切なものを気づかせてくれた後輩たちには感謝したい。

この早慶戦で4年生は引退、赤迫主将の新体制が始まるが、あくまで結果に拘って来年こそは、全員柔道で早稲田に優勝カップをもってきてほしい。

第63回早慶対抗柔道戦
井浦佑紀(平成22年卒)