窮理在平生 臨事要明断
監督の声 キャプテンの声 選手募集 スタッフ募集 トレーナー募集 江川トレーナーのコンディショニング講座 コラム~青畳の記憶~諸先輩からの寄稿文 部員日誌
新入部員募集中! 君も早稲田の畳で日本一を目指そう!

早慶戦観戦記

第64回早慶対抗柔道戦 (平成24年11月18日)

11月18日、第64回早慶対抗柔道戦が、慶應義塾大学日吉体育館にて行われました。誠に僭越ではございますが、平成24年卒の上田卓がご報告をさせて頂きます。

今回は3年ぶりの敵地での試合。同じ早慶戦でもどちらの会場で行うかだけでも選手にとってはかなり雰囲気が変わるものである。私も3年前のちょうどこの時期、この場所で試合したこともあって、当時の緊張感を思い出した。

今年度の試合では、1年生の活躍や4年生の最後の堂々とした戦いなど、見所の多い試合であったが、結果は11対9で敗北。良い場面も多かっただけに非常に悔しい結果である。しかし、良かったところはそのままに、改善点を確認し、今後に活かしてもらいたいと思う。また、今年度行われた女子3人制エキシビジョンにも注目が集まった。

今年度より、試合は『早慶対抗柔道戦試合規定』という講道館柔道審判規定を一部変更した新しいルールのもと行われた。一試合ごと振り返っていこうと思う。

開会式の様子
開会式の様子

【女子3人制エキシビジョン】

[先鋒]鬼谷奈津子(1年) 〇(棄権) - 金子絵理(3年)

金子は開始直後、相手に返し技で有効を取られた際、足首を負傷してしまう。審判員の試合続行不可能という判断により金子は棄権負けとなった。早稲田側に不穏な空気が流れる。

[中堅]富岡愛美(2年) - 〇(払腰) 山口悠子(1年)

3人制団体のため、慶應側はあと1点取った瞬間にチームの勝ちが決まるということもあり、富岡は開始から機敏な動きを見せ、攻めの柔道にかかる。しかし山口は冷静に、きちんと前襟と袖を持ち、自分の組手になったところで得意の払腰で豪快に一本を決める。

払腰で決める山口(社会科学部・1年・佐賀商業)
払腰で決める山口(社会科学部・1年・佐賀商業)
[大将]難波英里(1年) 引き分け 五十嵐祥子(1年)

勝負の行方は1年生同士の大将戦に委ねられた。早慶共に自分の得意技を出し合うも、お互いにポイントとなるにはあと一歩及ばずというまま5分間の試合が終了し、引き分けに終わる。

ここで女子全試合が終了し、引き分けという結果で女子3人制エキシビジョンは幕を閉じた。引き分けに終わってしまったものの、私はこの女子団体戦において『早慶共に指導が一回も与えられなかった』ということが非常に良かった点であったと思う。つまり、互いに攻めの柔道に徹した結果の引き分けであるということだ。女子は早慶共に選手全員が3年生以下であり、来年度はこのメンバーに新入生を加え新体制となる。川田女子監督の指導の下、新しいチームとして改めて勝負を決めてもらいたい。

【男子団体(20人制)】

[先鋒]辻卓也(1年) - 〇(送襟絞) 桐生知明 (1年)

私はこの先鋒戦は今回最も良かった試合の中の一つであったと思う。

この後のチームの流れが大きく左右される先鋒戦ということもあり、お互い果敢に技を出し合うも両者なかなか決まらず、『このまま引き分けなのか』、脳裏にそのような言葉が過ったまさにその瞬間であった。相手がほんの少し息を抜いたその隙を桐生は見逃さず、送襟絞に入り、そのまま一本。大歓声と共に早稲田に良い流れが向いた。

先鋒戦で勝利する桐生(商学部・1年・小田原)
先鋒戦で勝利する桐生(商学部・1年・小田原)
[次鋒]郡司拳佑(1年) 〇(合技) - 片岡雅樹(2年)
森山寛太(3年) 〇(腕拉十字固) - 山田将弘(2年)

しかし何が起こるのか分からないのが早慶戦というものである。

先鋒で流れを掴んだと思いきや、ここから慶應の追い上げが始まる。片岡は慶應の新人エース郡司に引くことなく組みに行くも、有効、技有とポイントを取られ、最後は抑え込まれてしまう。続く山田もなかなか自分の柔道をすることができず、焦りも出てきたところを関節技で敗退。2対1と慶應にここで逆転を許してしまう。

安藝悠馬(1年) 〇(注意) - キアラシ ダーウッド(3年)
宮本康平(1年) ○(注意) - 五嶋広道(2年)

何とかして流れを取り戻したいところであるが、慶應の勢いは止まらない。

この2試合は私から見て、どちらも純粋な柔道の実力の差はないものの、試合運びという点で勝負が決まってしまったように感じられた。キアラシは上手く自分の体格を生かしきれず、五嶋は自分よりも大きい相手に体格差を利用された柔道で共に注意により敗退。

瀬詰晃弘(2年) - ○(掬投) 石井雄也(1年)
菅原将吾(1年) - ○(払腰) 吉野拓馬(1年)

しかし早稲田も負けてばかりはいられない。何とかして流れを向かせたいところであるこの場面で、石井(雄)・吉野の1年生2人が見せてくれた。

石井は瀬詰が不十分な組手・体勢で技に入った隙を見抜いて掬投で一本。続く吉野も豪快な見事な払腰で早々と一本を決める。先鋒の桐生・石井・吉野という1年生3人の活躍により4対3と接戦が続く。

払腰できめる吉野(社会科学部・1年・石川県工)
払腰できめる吉野(社会科学部・1年・石川県工)
高辻大地(3年) ○(払腰) - 星野映(3年)
井上凡(4年) - ○(反則) 後藤有輝(4年)

続く星野は190cm・100kgの高辻に背負投を何回もくり出し挑むも、最後は星野が技の戻り際にかけられた払腰で一本を取られ敗退。続く後藤は相手の反則により勝利。井上が想像以上の粘りを見せるものの、ここは冷静に反則勝を収め、副主将としてきちんと仕事を果たし、5対4、再び1点差となる。

[中堅]新藤嘉樹(1年) ○(大内刈) - 石井悠大(1年)
山本俊介(3年) ○(払腰) - 高山尚勝(2年)

1点差に戻したところで中堅、試合は折り返しに入り、まだまだ分からない勝負の行方は後半戦に持ち越された。後半戦をいい流れでスタートしたい早稲田であるが、石井が大内刈、続く高山も払腰で一本を決められ敗退。ここまでで7対4、3点差とされてしまう。

梅田貴志(2年) - ○(腕拉十字固) 小林将来(2年)

昨年と同様、不穏な空気を打破してくれたのは2年小林であった。

終始自分のペースの安定した試合が進む。得意な組手になると様々な技で攻め、返し技で技有、最後は寝技で一本を決めた。

7対5、再び2点差まで詰め寄る。

鎌田一輝(2年) ○(合技) - 野口雄飛(3年)

続く野口は、相手の組手・技に合わせた組手・裁きを展開することで自分からなかなか攻め始めることが出来ず、常に先手できた鎌谷に肩車により技有を2回取られることで敗退してしまう。

福島遼太郎(2年) - ○(技有り) 吉原大貴(1年)
藤塚捷(2年) - ○(肩車) 蛯沢敏生(1年)
大腰にはいる蛯沢(スポーツ科学部・1年・蕨)
大腰にはいる蛯沢(スポーツ科学部・1年・蕨)

ここで再び2人の1年生が活躍を見せてくれた。

まず吉原は序盤から背負投を中心とした技で一方的に攻撃を仕掛けていく。相手の福島は昨年度の早慶戦で、前主将の村山と戦うも一本を取られなかったほど受けの強い選手であるが、場外際で上手くタイミングを合わせた一本背負投が決まり勝利。続く蛯沢も大腰で技有を取り、最後は肩車で一本勝ち。決まり技として肩車が登場するあたりが、何とも早慶戦らしいところである。

下級生の活躍により、ここまでで8対7、再び1点差となる。

上原周(4年) ○(払腰) - 石原佑太郎(4年)
高橋陽二郎(3年) - ○(合技) 立浪祐(1年)

続く石原は、試合に向けての稽古のみならず、主務として運営も携わってきた早慶戦であるだけに是非頑張ってほしいところである。しかし、得意の足技を出すことが出来ず最後は体格差を利用された柔道により敗退。

ここまで1年生が大活躍の早慶戦、やはりここでも1年生の立浪が払腰で技有を取ってからの抑込により一本勝ちで1点を返す。

9対8と再び1点差に戻し、早稲田の勝利は残り3名の4年生に委ねられた。

内股で攻める立浪(社会科学部・1年・小杉)
内股で攻める立浪(社会科学部・1年・小杉)
藤井岳(3年) ○(内股) - 堀敦登(4年)

まずは副主将の堀。相手の藤井は慶應のエースであり、体格も堀よりも遥かに大きく一見不利にも見えるが、一筋縄でいかなく、何が起こるか分からないのが堀である。得意の巴投を中心に攻め、また相手の技をさばく。しかし良い動きを見せるものの、最後は内股に入ったところを返され敗退。

[副将]檜垣卓志(4年) ○(背負投) - 福井彬(4年)

続く福井は一昨年敗退した相手、また4年生同士ということもあって絶対に負けたくないところであるが、一昨年と同様の技で一本を決められてしまう。ここでチームとして早稲田の敗北が決まる。

[大将]大前知也(4年) - ○(縦四方固) 赤迫健太(4年)

敗北が決まってしまったものの、最後は大将赤迫がキャプテンとしての貫録を見せる。背負投を中心に攻めてくる相手に終始堂々とした柔道で最後は抑込で一本勝ち。チームの敗北に決して感情的にならず、冷静に決めてくれた。

最終結果、11対9、今年度の早慶戦は慶應に軍配が上がった。

早慶両校の主将
早慶両校の主将

今回の早慶戦はとにかく『1年生が活躍した』ということが一番印象深かった。今回の9点中6点は1年生による得点である。このことは初めての早慶戦であるのにも関わらず、その独特の雰囲気に怯むことなく冷静に戦った結果である。一方上級生は早慶戦がどのような試合であるかを知っているがゆえに、緊張しすぎて逆に自分の柔道が出来なかったという選手が多かったのではないかという印象を受けた。一定の緊張は持ちつつも、冷静に自分の柔道をし、試合の中の自分の役割を果たしてくれることを来年度以降に期待したい。

今年度はこのような結果に終わってしまったが、星野新主将を迎えての新体制の部で、来年こそ勝利を掴んで欲しい。私自身もかなり思い入れの強いのが早慶戦で、最大のライバルである慶應には負けてほしくない。そのために普段の稽古から、頭のどこかでは常に早慶戦のことを意識し、吉村監督、樗澤ヘッドコーチ、コーチ陣の先輩方のご指導の下、日頃の稽古に望んで欲しい。

上田卓(平成24年卒)