柔道選手はトレーニングをしているのでしょうか?
柔道選手にトレーニングは必要なのでしょうか?
ここでいうトレーニングとは「柔道の練習」という意味ではありません。筋トレや走り込みやストレッチングや食事や睡眠など、柔道をするために必要な基礎身体能力を伸ばすことをさします。
いわゆる格闘技選手がトレーニングをしっかりとやっているのはトレーニングセンター等でよくみかけるのですが、柔道選手が明確な目的を持って科学的にトレーニングをしている姿を私はほとんどみたことがありません。
いろいろな方から柔道界の現実を聞いてみると、柔道界では未だ科学的な「トレーニング」というものが定着していない・・・というか定着しづらい現状があるようです。
なんとなくいろいろな試合を客観的に見てきましたが、確かに特にトレーニングをしなくても勝てる選手はいます。なんにもしなくても強い選手は強いみたいですね。なんにもしなくても勝った奴が強い。これは間違いない。
もちろん、トレーニングを頑張る=柔道が強くなる、とはなりません。
柔道が強くなるためには絶対に「柔道」をするしかありません。柔道の技術や感性は柔道でしか養えないのは当然です。トレーニングの「特異性の原則」にも当てはまります。
ではトレーニングは何のためにやるのか。
これはパフォーマンスピラミッドという競技力の高さを示す概念図です。三角形の面積が大きいほど競技力が高いと考えてください。
競技力の土台となるのは、選手自身のコンディションと、基礎体力です。どんなに柔道の技がうまくても、柔道センスがあっても(専門スキルが高くても)、体調管理ができていなければ試合でその能力は活かせません。試合時間全体にわたって冷静でありながらも全力で動ければ、柔道の専門スキルを活かすチャンスは多く巡ってくるでしょう。
まず体調管理が完璧であること。そして柔道に必要な体力要素が十分に鍛えられていること。その上で柔道の専門スキルや戦術が活きてくる。つまりコンディションが悪く、柔道に必要な体力がないと、その上に乗っかってくる柔道の専門スキルも小さくなってしまう。総じて小さなパフォーマンスピラミッドしか構成されない→競技力が低い、ということになります。
そうです。パフォーマンスピラミッドの土台を大きくすること(体調管理、基礎体力向上)が、戦術や柔道の専門スキルを伸ばす可能性につながるのです。
ここで専門的な用語としてのトレーニングとコンディショニングをきちんと定義しましょう。
体調を整えること、試合に向けて身体の状態をよりよい状態に調整することを「コンディショニング」といいます。そして、基礎体力向上(プラクティスともいう)とコンディショニングの2つを合わせて、「トレーニング」といいます。
そう、「トレーニング」は、柔道が強くなるための土台づくりのために行うのです。
こう考えると、今なんにもしなくて柔道が強い選手が、トレーニングをしっかりと行い、パフォーマンスピラミッドの基部を大きくしたとしたら、柔道の競技力が伸びる可能性は今よりもさらに高まるといえます。たいしたトレーニングをせずに強いならば、トレーニングをすればさらに強くなる余地ができるとも考えられる。
逆にいえば、未だ柔道界では「科学的なトレーニング」の導入が曖昧なので、いちはやくトレーニングを導入した選手やチームは他を追い抜くチャンスかもしれませんね。
選手を育てる、怪我を予防するという観点からも柔道にとってトレーニングは重要な要素になるでしょう。
柔道をみっちりやって、その上でトレーニングもしっかりと行う!
これがこれからの柔道界の課題かも。
で、どんなトレーニングをすればいいか・・・。
それはまた次回。
あ、一応第7回も読んでおいてください(笑)