「脳をセットする」ことを、脳機能学、認知科学では「内部表現の書き換え」と呼んでいます。変わった自分を明確に意識することによって脳をその状態にしてしまう(脳をだます→書き換える)ということです。
これは以前にもこのコーナーに書きました。
http://www.waseda-judo.com/trainer_sp/detail-6.html
大事なのでもう一回形を変えて書いてみます。
戦い抜ける選手になるためには、「やらされている」状態ではよろしくありません。「脳のセット」が自分を変える、すなわち強くなるためのカギです。
試合のシーズンが終わり、冬期強化シーズンへと移行し約1か月がたちました。選手たちはいろいろな形で来期に向けて練習に励んでいます。しかし、やはり「何か」が足りません。明確な目標設定がないようにみえます。それもかなり具体的なイメージです。
全国何位とか、強くなるとか、技がどうのこうのとか、そういう抽象的なものでは、「脳のセット」はできません。具体的に、身体をどう変えるのか、それによりどんな自分になるのか、それがどう柔道に結びつくのか。そしてそれが達成されたイメージを持ちます。
はたして選手たちはどこまで考えているか。考えた選手は大きく変わります。これは「脳」の問題です。根性もキモチも、結局「脳」の問題なんです。
脳の内部表現を書き換えたつもりなのに、上手く目標達成が出来ない人がいるのは、目標を達成した世界の臨場感が薄く、現実の方の臨場感が高いから、ホメオスタシス(生物の恒常性)の作用で現状を維持する機能が強く働く為だと考えられます
つまり、脳を書き換えない限り、目標は達成されません。
「戦い抜ける選手」になるために必要なのは、まず「明確な目標設定」。そしてそれに至る道を作るための「脳内部表現の書き換え」。とにかく強く、強く、鮮明に自分の目標をイメージすること。
「脳に刻印する」ともいいます。
また、指導陣に求められるのは、選手が鮮明に、明確に勝利をイメージできるようにするために、いい形、流れで試合に勝った(これは試合だけでなく、それまでの練習経過やコンディショニングを含めて)という成功体験をたくさん選手に経験させることでしょう。だからこそ、日々の練習や出稽古ひとつひとつを意識して臨むことが、脳科学の視点からも意味を持つのです。選手の「脳が喜ぶ」状況をたくさん作り出すことが、大きな勝利を掴むための第一歩です。